生活習慣病とは、偏った食生活や運動不足、喫煙、飲酒等の健康に害となる生活習慣を続けることが原因で起こる疾患群で、高血圧症、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高尿酸血症、痛風等さまざまな病気を含みます。
また、この生活習慣病と肥満が重なると動脈硬化をおこしやすく、がん、脳血管疾患、心臓病など命に係わる病気へのリスクがさらに高くなるとされています。
治療は、生活習慣(ライフスタイル)を変える事から始めますが、食事の取り方や内容、水分の取り方、運動の種類や量、禁煙、減酒および禁酒、睡眠時間、ストレス解消法に至るまで、幅広く考えていく事で効果的に進める事が出来ます。
糖尿病とは、体を動かすエネルギー源であるブドウ糖を細胞が取り込めなくなり、血液中の糖の濃度が高くなる病気です。健康な人なら、インスリンというホルモンがしっかりはたらいて、血液中のブドウ糖を細胞が取り込んでエネルギー源にしたり、あるいは脂肪やグリコーゲンという物質に変えて蓄えたりするのですが、何らかの原因でこのインスリンの量が不足したり、うまく細胞に作用しなくなったりした状態が糖尿病です。
糖尿病の怖いところは、高血糖が続くと動脈硬化が促進されてしまう為、全身の血管が傷み、神経の働きまで障害され、動脈硬化性疾患や網膜症・腎症・神経障害などさまざまな合併症を引き起こしてしまうところです。
治療は、まず食事療法と運動療法を行います。これだけで血糖値が改善する患者さまも多いのですが、糖尿病が進行したケースや、食事・運動療法だけでは血糖値がうまくコントロールできない場合には、内服薬やインスリン療法を行うことになります。
糖尿病は、その病気自体よりも動脈硬化性疾患や網膜症・腎症・神経障害などの合併症への注意が大切です
高血圧とは、血圧が正常範囲を超えて高く維持されている状態です。
高血圧は日本人にはとても多い病気で、40~74歳の人のうち男性は約6割、女性は約4割が高血圧と言われます。血管に加わる高い圧力がストレスとなり、放っておくと動脈硬化が生じて狭心症、心筋梗塞、心不全といった心臓血管系の病気を招いたり、脳出血、脳梗塞や腎不全の原因になったりします。
高血圧の怖いところは、自覚症状がないため健康だと思っていた人が、急に心臓や脳の命に係わる病気を引き起こしてしまうところです。
治療は、常日頃から生活習慣や内服薬などでしっかりと血圧をコントロールし動脈硬化を防ぐことです。
特に身内に高血圧の人がいる場合は、自分が高血圧になるのを遠ざけるために、塩分摂取をひかえ、禁煙、飲酒は適量を心がけ、運動不足やストレスの解消など、生活習慣改善に努めましょう。
高血圧は自覚症状がなく進行します。放置すると心筋梗塞や心不全、脳卒中を引き起こす危険性があります。
脂質異常症は、血液中の脂質、具体的にはコレステロールや中性脂肪(トリグリセリドなど)が、正常範囲を超えて多い状態のことです。以前は高脂血症といわれていました。脂質異常症を放置すると、血がドロドロの状態になり、増えた脂質がどんどん血管の内側に溜まり、動脈硬化を起しやすくなります。脂質異常症の怖いところは、高血圧同様に自覚症状がないため、そのまま進行すると、ある日突然心筋梗塞などの発作を起こしかねないところです。
治療は、常日頃から食事療法を含む生活習慣改善や内服薬などで脂質をコントロールし動脈硬化を防ぐことです。特に最近では、家族性高コレステロール血症など重症の脂質異常症の患者さまを対象とした、月に1~2回の皮下注射による新薬が使用可能となり、内服薬で脂質コントロール困難な患者様への治療選択肢が広がりました。
健康診断などで「脂質異常症の疑いがある」と指摘された方は、放置せずに早めに受診してください。
脂質異常症は、高血圧や糖尿病と同様に放置すると動脈硬化が進み心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります。
高尿酸血症は、血中の尿酸濃度が高い状態が長く続きます。それを放置すると、尿酸が関節の中で固まって結晶になるために関節炎を起こし、ある日突然、足の親指の付け根などの関節が赤く腫れて痛み出します。痛みは耐えがたいほどの痛みで、「痛風」という病名には「風に吹かれただけでも痛い」という意味合いが込められています。
痛風を起こす人は、そうでない人よりも心筋梗塞や脳梗塞になりやすいことも知られています。これは、痛風に糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病が合併しやすく、動脈硬化になりやすい状態が重なっているためです。
この病気の研究は進み、良い薬も開発されたため、正しい治療を受け、食生活を改善すれば、まったく健康的な生活が送れます。しかし、放置すると動脈硬化や、痛風腎と言って腎機能障害を引き起こす可能性もあり、痛風の症状が無くても尿酸値が高い方は、早めにご相談ください。
尿酸値が高いと痛風で痛い思いをするだけでなく、動脈硬化や腎障害の危険因子にもなり注意が必要です。
肥満、特に内臓まわりに脂肪が溜まって、お腹がぽっこり出ている「内臓脂肪型肥満」の方は、血圧、血糖、脂質値などの異常を来たしやすく、その結果、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病が重なりやすいことがわかっています。
内臓脂肪型肥満(へその高さの腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上)があり、高血圧、高血糖、脂質異常症のうちの2つ以上が重なっている状態を「メタボリックシンドローム」と言います。
メタボリックシンドロームの患者さんでは、血圧、血糖、脂質などの値がそれほど異常でなくても、それらが重なることで動脈硬化が一層進展しやすくなり、心筋梗塞や脳血管障害などの心血管イベントの危険率が高まることが知られています。また、大腸がんや乳がんなど一部のがんでは、メタボリックシンドロームと関係が深いことが近年明らかになってきました。動脈硬化性疾患や心臓病だけでなく、がんともかかわりがあることを考慮すると、メタボリックシンドローム予防は非常に重要であるといえるでしょう。
そのためには、食事療法と運動療法の二本柱が必要になってきます。
具体的には、栄養バランスが良く、エネルギー(カロリー)量も適切な食事を3食きちんと摂り、夜遅くの飲食は控える、アルコールはほろ酔い程度に抑える、ウォーキングなどの軽めの有酸素運動を習慣づける(1日30分以上、週に3回以上)、などを心がけましょう。
生活習慣病と肥満が重なると動脈硬化を起しやすく、
心臓病や脳血管疾患だけでなく、発がんリスクも含めて重大な病気にかかる危険性が高くなります。